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遺留分侵害額請求は「知ってから1年」 遺言で取り分ゼロでも諦めない【2026】

著者:相続問題総合ガイド 編集部
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「遺言書に『財産はすべて長男に相続させる』と書いてあった。自分には何も残されていない」

親の遺言を見て、言葉を失った方もいるのではないでしょうか。悲しさと悔しさがある一方で、「遺言は故人の意思だから、従うしかない」「お金のことで兄弟ともめたくない」と、気持ちを押し込めてしまう方も少なくありません。

けれども、配偶者や子どもには、遺言でも奪うことのできない最低限の取り分が法律で認められています。それが遺留分です。そして、遺留分を取り戻す手続きが遺留分侵害額請求です。

ただし、この請求には「知ってから1年」という短い期限があります。迷っているうちに期限が過ぎてしまうと、取り戻せなくなります。この記事では、遺留分があるかどうかの確かめ方から、金額の計算、請求の進め方、家族関係を壊さないための注意点まで、順を追って解説します。

結論|遺言で取り分ゼロでも、配偶者・子・親には「遺留分」がある

遺留分とは、一定の相続人に保障された最低限の取り分のことです。遺言で「全財産を長男に」と書かれていても、ほかの相続人は遺留分にあたる額を取り戻すことができます。

遺留分がある人と、その割合は次のとおりです。

相続人の組み合わせ 遺留分の割合(遺産全体に対して)
親(直系尊属)だけが相続人 3分の1
それ以外(配偶者・子がいる場合) 2分の1
兄弟姉妹 遺留分はない

(出典:e-Gov法令検索「民法」第1042条)

相続人が複数いる場合は、この割合に、それぞれの法定相続分をかけた割合が、一人ひとりの遺留分になります。

もう一つ大切なのが、2019年7月1日以降に亡くなった方の相続では、遺留分はお金で請求するということです。(出典:e-Gov法令検索「民法」第1046条、裁判所「遺留分侵害額の請求調停」)以前のように、実家の土地を兄弟で共有するといった形にはならないため、話し合いで解決しやすくなりました。

山田くん山田くん

遺言は亡くなった親の最後の意思ですよね。それに逆らって請求するなんて、親不孝な気がしてしまうんですが…。

司法書士の先生司法書士の先生

遺留分の請求は、親の意思に逆らうことではありません。法律が、遺言の自由と残された家族の生活のバランスを取るために用意した正当な権利です。請求するかどうかはあなたが決めてよいことで、請求したからといって親不孝になるわけではありません。

いくら請求できる?遺留分の計算をモデルケースで

遺留分の計算のもとになるのは、亡くなった方が残した財産に、一定の生前贈与を足し、借金を引いた額です。(出典:e-Gov法令検索「民法」第1043条)

モデルケース:父の遺産6,000万円(借金なし)の場合

ケース 相続人 遺言の内容 遺留分の割合 請求できる額
A 母・長男・長女 すべて母へ 長男・長女それぞれ8分の1(2分の1×4分の1) 1人750万円
B 長男・次男 すべて長男へ 次男4分の1(2分の1×2分の1) 1,500万円
C 父の兄・妹 すべて知人へ 兄弟姉妹は遺留分なし 請求できない

ケースAは、配偶者と子が相続人の場合です。遺産全体の遺留分は2分の1で、子1人の法定相続分は4分の1なので、子1人の遺留分は8分の1になります。

生前贈与も計算に入る

亡くなる前にされた贈与も、一定の範囲で計算に入ります。相続人以外への贈与は原則として亡くなる前1年以内のもの、相続人への贈与は亡くなる前10年以内の、結婚・養子縁組や生計の資本としての贈与が対象です。(出典:e-Gov法令検索「民法」第1044条)たとえば「長男だけが家を建てるときに1,000万円もらっていた」という場合は、その分も含めて計算します。

実際の口コミ実際の口コミ

「昨年父が亡くなりました。 父の自筆遺言書には執行人の記載がなかった為、裁判所で検認をした後、裁判所に遺言執行者選任申立書を提出して、私が遺言執行者になりました。遺言の内容は母が全て相続するとなっています。 妹から遺留分の請求があるのですが、 その際、私の方でも遺留分を母に請求しないと、次に母が亡くなった時の財産がその分(私の請求できる遺留分)が減っていないので、妹に有利になってしまいます。」

回答:「お父様の相続における遺留分と、将来お母様が亡くなられた際の相続は、法的にまったく別の問題です。」 (出典:Yahoo!知恵袋、2026年1月20日投稿/質問ページ)

この相談は、まさにケースAの形です。父の遺言で母がすべてを相続し、妹が母に遺留分を請求しました。相談者は「自分も請求しないと、次の母の相続で不利になる」と心配していますが、回答のとおり、父の相続と母の相続は別の問題です。遺留分を請求するかどうかは、それぞれが自分の事情で決めることになります。

山田くん山田くん

母が全部相続するなら、どうせいつか子どもに戻ってくるお金ですよね。それでも妹が請求するのは、わがままなんでしょうか?

司法書士の先生司法書士の先生

わがままではありません。遺留分は、子一人ひとりに認められた権利です。母の生活を優先して請求しない人もいれば、今の生活のために請求する人もいて、どちらも正当な選択です。大切なのは、相手の選択を責めるのではなく、母の生活費が足りるかなど、家族全体の事情を一緒に確認することです。

期限は「知ってから1年」。相続開始から10年で消える

遺留分侵害額請求には、2つの期限があります。

期限 数え始める日 過ぎるとどうなる?
1年 相続の開始と、遺留分を侵害する遺贈や贈与があったことを知った時 時効で請求できなくなる
10年 相続が開始した時(亡くなった日) 知らなくても請求できなくなる

(出典:e-Gov法令検索「民法」第1048条)

多くの場合、遺言の内容を知った時から1年が勝負です。相続放棄の3ヶ月、相続税申告の10ヶ月など、相続にはほかにも期限があります。全体の期限は「相続手続きの期限一覧」で確認できます。

注意したいのは、1年以内に「請求します」という意思を相手に伝えればよいという点です。金額が決まっていなくても、期限内に意思表示をしておけば時効は止まります。

山田くん山田くん

遺言のことは知っていたけど、ショックで何もできないまま半年が過ぎてしまいました。もう遅いですか?

司法書士の先生司法書士の先生

遅くはありません。遺言の内容を知ってから1年以内であれば、まだ請求できます。ただし残り時間は半年なので、まず内容証明郵便で「遺留分侵害額を請求する」という意思だけでも相手に伝えてください。金額の計算や話し合いは、そのあとでも間に合います。

請求の流れ|話し合い→内容証明→調停→訴訟

遺留分侵害額請求は、いきなり裁判所に行く必要はありません。次の順番で進めるのが一般的です。

  • 話し合い:遺産を多く受け取った相手に、遺留分を払ってほしいと伝える
  • 内容証明郵便で意思表示:期限内に請求したことを記録に残す
  • 家庭裁判所の調停:話し合いがまとまらないときに、調停委員を交えて話し合う
  • 訴訟:調停でもまとまらないときの最後の手段

ここで必ず知っておきたいのが、調停を申し立てただけでは、相手への意思表示にならないということです。裁判所も、調停とは別に内容証明郵便などで意思表示をする必要があると案内しています。(出典:裁判所「遺留分侵害額の請求調停」)

調停の項目 内容
申し立てる人 遺留分を侵害された人(兄弟姉妹以外の相続人)
申立先 相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所
費用 収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手

(出典:裁判所「遺留分侵害額の請求調停」)

調停の進み方は、遺産分割調停とよく似ています。調停の流れや期間の目安は「遺産分割調停の流れ」も参考にしてください。

なお、請求された側がすぐにお金を用意できない場合、裁判所は支払いに期限の猶予を与えることができます。(出典:e-Gov法令検索「民法」第1047条)実家しか財産がないケースでは、分割払いなどの話し合いも選択肢になります。

山田くん山田くん

内容証明って、なんだか宣戦布告みたいで兄に送るのが怖いです。普通の手紙やLINEではだめなんですか?

司法書士の先生司法書士の先生

法律上は、意思が相手に伝われば方法は問いません。ただ、あとで「そんな連絡は受け取っていない」と言われると、期限内に請求したことを証明できなくなります。内容証明は「いつ、どんな内容を送ったか」を郵便局が証明してくれる方法です。送る前に電話などで「期限があるので形式として送る」と一言伝えておくと、相手の受け止め方も和らぎます。

財産が分からないときの調べ方と費用

遺留分を計算するには、亡くなった方の財産を把握する必要があります。ところが、遺産をすべて受け取った側が財産を教えてくれないこともあります。

実際の口コミ実際の口コミ

「遺留分侵害請求ってお金どれくらいかかるものなのでしょうか 亡くなった人の財産を調べるのって結局弁護士さんとかに頼んだ方がいいですよね?」

回答:「でも、相続人であるあなたが委任している弁護士ということなら金融機関は答えるでしょう。ということは、あなた自身が聞いても答えてくれるということです。」 (出典:Yahoo!知恵袋、2026年1月18日投稿/質問ページ)

回答にあるとおり、相続人であれば、自分で調べられる財産は少なくありません。弁護士に頼む前に、まず自分でできる範囲を確認してみましょう。

財産の種類 調べ方 問い合わせ先
土地・建物 名寄帳(固定資産課税台帳)の取得、登記事項証明書の取得 市区町村役場、法務局
預貯金 残高証明書や取引履歴の発行を依頼 各金融機関
株式・投資信託 残高証明書の発行を依頼 証券会社
生前贈与 預金の取引履歴から大きな出金を確認 各金融機関

金融機関への問い合わせには、亡くなった方の戸籍謄本や、自分が相続人であることを示す書類が必要です。必要な書類は金融機関ごとに異なるため、事前に確認してください。

山田くん山田くん

弁護士に頼むと、取り戻せたお金がほとんど費用で消えてしまうんじゃないかと心配です。

司法書士の先生司法書士の先生

請求額が小さい場合は、その心配があります。まずは自分で財産を調べ、遺留分の目安を計算してみてください。請求額が大きい場合や、相手が財産を隠している疑いがある場合、調停になりそうな場合は、弁護士に依頼する価値が大きくなります。初回相談を無料にしている事務所も多いので、費用の見積もりを先に聞いておくと安心です。

家族関係を壊さないために知っておきたいこと

遺留分の請求は正当な権利ですが、家族の関係に影響するのも事実です。進める前に、次の点を考えておくと後悔が少なくなります。

請求しないという選択もある

遺留分は「請求できる権利」であって、請求しなければならないものではありません。母の生活を守るため、あえて請求しないと決める人もいます。ただし、1年の期限が過ぎると後から気が変わっても請求できないため、「請求しない」と決めるなら、内容をよく理解したうえで決めることが大切です。

生前に遺留分を放棄するには家庭裁判所の許可が必要

親が生きているうちに「遺留分はいらない」と約束しても、それだけでは効力がありません。相続が始まる前の遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り効力が生じます。(出典:e-Gov法令検索「民法」第1049条)口約束だけで安心しないようにしましょう。

弁護士に相談したほうがよいケース

ケース 理由
期限まで3ヶ月を切っている 内容証明の作成や証拠の確保を急ぐ必要がある
相手が財産を開示しない 調査や調停での資料提出の求め方に専門知識が必要
多額の生前贈与がありそう 計算に入る贈与の範囲の判断が難しい
不動産の評価で意見が割れている 評価額しだいで請求額が大きく変わる
相手と直接話すと感情的になってしまう 代理人を立てると冷静に話し合いやすい

相続人が行方不明で話し合いが進まない場合は「相続人が行方不明・音信不通のときの遺産分割の進め方」も参考にしてください。

山田くん山田くん

兄とは仲が悪いわけではないので、できれば裁判所に行かずに解決したいです。何から話せばいいですか?

司法書士の先生司法書士の先生

まずは「遺言に反対したいのではなく、法律で決まっている最低限の分だけ受け取りたい」と伝えるところから始めてください。そのうえで、財産の一覧を一緒に確認し、遺留分の金額と支払い方法を相談します。合意できたら、金額と支払い時期を書面に残しておくと、後のトラブルを防げます。

よくある質問

兄弟姉妹は遺留分を請求できますか?

できません。民法は、兄弟姉妹以外の相続人に遺留分を認めています。(出典:e-Gov法令検索「民法」第1042条)亡くなった方に子や親がおらず、兄弟姉妹が相続人になる場合、遺言で全財産を他の人に渡されると、兄弟姉妹は取り戻すことができません。

2019年7月より前に亡くなった場合はどうなりますか?

2019年7月1日より前に亡くなった方の相続では、改正前の民法が適用されます。この場合、遺留分侵害額の請求調停は申し立てられず、遺留分減殺による物件返還請求などの調停を申し立てることになります。(出典:裁判所「遺留分侵害額の請求調停」)

相手が「お金がないから払えない」と言ったら?

遺留分侵害額請求は、お金を支払うよう求める権利です。相手がすぐに払えない場合、裁判所は相手の請求により支払いの期限を猶予することができます。(出典:e-Gov法令検索「民法」第1047条)話し合いで分割払いにしたり、相続した不動産を売ったお金で支払ってもらったりする方法もあります。


本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。具体的なご相談は専門家にお問い合わせください。

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